Appleが元従業員の証拠隠滅を主張する新資料を提出しました。
Appleが2026年8月31日(米国時間)、OpenAIを相手取った営業秘密訴訟で「衝撃的な証拠」と自ら呼ぶ新たな資料を裁判所に提出しました(出典: TechCrunch)。焦点は、退職した従業員が会社貸与端末を返却しないまま社内データへアクセスし続けたと主張されている点です。本記事は有資格者による法的助言ではなく、公表資料から確認できる事実と、事務所の情報管理に関する論点の整理にとどめます。退職者アクセス権の管理は、顧客の秘密情報を大量に扱う士業事務所にとっても他人事ではありません。
何が起きたか:返却されたMacBookから始まった追加主張
Appleが新たな主張を展開できたきっかけは、元従業員側の代理人が2026年8月に旧Apple貸与ノートPCを調査のために引き渡したことでした。TechCrunchによれば、Appleはその端末の調査結果をもとに、元従業員がOpenAIでの業務においてAppleの機密回路図を用いたほか、Apple社内の技術用アプリケーションと同名のツールを使っていたと主張しています。
さらにAppleは、元従業員が自身への調査が始まったことを知った2026年6月に、OpenAIの同僚に協力を求めて証拠を破棄したとも主張しています。裁判所への提出書面には、この端末が「被告側がこれまでに提供したごくわずかな情報を示すものにすぎない」との記載があります。新証拠そのものは公開版では黒塗りされており、外部から中身を確認することはできません。
一方でOpenAIは、公式ブログで当該元従業員を擁護しています。退職後のアクセスは元同僚に頼まれた協力のためであり、そもそも退職者のアクセス権が残っていたのはApple側の権限管理の問題だという立場です。これに対しAppleは、認証系の未知の不具合を突いた結果だと反論しており、双方の主張は真っ向から対立しています。
士業事務所にとっての3つの論点
第一に、退職時のアクセス権剥奪が「手続として存在するか」ではなく「実際に切れているか」という点です。今回の争いは、規程の有無ではなく運用の実態をめぐって起きています。貸与端末の回収、クラウドサービスのアカウント停止、共有ドライブの権限見直しが同じ日に完了しているかどうかは、事務所側で確認できる事項です。
第二に、記録が残っているかという点です。今回Appleが主張を組み立てられたのは、端末のログを事後に調査できたからでした。誰がいつどのファイルにアクセスしたかを後から追える状態は、生成AIの利用ログを含めて士業事務所でも論点になります。事務所内のAI利用の記録については、事務所のAI利用ログと監査証跡の運用でも扱っています。
第三に、転職先へ情報が持ち出されたときの影響範囲です。日本国内では、経済産業省が営業秘密管理指針(最終改訂 令和7年3月31日)で、営業秘密として扱われるには秘密として管理する意思が従業員に明確に示されている必要があると整理しています。今回は米国の訴訟であり、日本法の当てはめをここで行うことはしません。ただし、秘密管理の実態が事後に問われる構造は共通しており、事務所としても生成AIと守秘義務の関係とあわせて確認しておく段階といえます。

データの取り扱いという視点
本件で見過ごせないのは、機密情報が最終的にAI開発企業の業務環境に入ったと主張されている点です。士業事務所が生成AIを導入する際も、入力したデータが学習に使われるかどうかはベンダーの公表するポリシーで確認する必要があります。今回の訴訟については、OpenAI側が当該データをモデルの学習に用いたかどうかは、公表資料からは確認できません。事務所での利用ルールの整備は、AI利用規程のテンプレートも参考になります。
今後の動き
Appleは、係争中はOpenAIがApple技術を基にしたハードウェア開発を進められないようにする仮処分と、証拠収集を前倒しする手続を求めています。初回の申立てによれば、OpenAIには400名を超えるApple出身者が在籍しているとされ(出典: TechCrunch)、Appleは他にも関係者がいる可能性を指摘しています。裁判所が仮処分をどう判断するかが次の節目です。
まとめ
Apple対OpenAIの営業秘密訴訟は、退職者のアクセス権が実際に切れていたか、記録が後から追えるか、そして情報が転職先でどう扱われたかという3点を浮かび上がらせました。顧客の秘密情報を預かる士業事務所にとっても、退職時の権限管理とログの保全を点検する契機になります。
参考文献
- TechCrunch「Apple shares ‘shocking evidence’ against former employee accused of stealing company data for OpenAI」
- 米連邦地裁への提出書面(CourtListener)
- OpenAI「Apple is getting this wrong」
- 経済産業省 営業秘密管理指針(最終改訂 令和7年3月31日)
- 経済産業省 営業秘密~営業秘密を守り活用する~
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引用元: TechCrunch
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