デジタル庁は行政手続の53.7%がオンライン化済みと公表しました。
デジタル庁は2026年8月26日、令和7年度の行政手続等の悉皆調査結果を公表資料のページで公開しました。国の26府省庁等が所管する全手続を対象にした調査で、令和7年11月1日時点の状況をまとめたものです。総手続数は76,275種類、そのうちオンライン化実施済は40,932種類で、オンライン化率は53.7%となりました。本記事は同庁が公開した調査結果概要のPDFと、同庁公式noteの技術記事という一次資料をもとに、士業事務所の業務に関わる数字を整理したものです。個別事案への当てはめや法令解釈は扱いません。
デジタル庁が公表した令和7年度調査の全体像
今回の公表は、7年前と比べてオンライン化率が4倍以上に伸びたことを示す内容です。デジタル庁の調査結果概要によると、オンラインで申請・届出等ができる手続の割合は令和元年度調査の12%から令和7年度調査の53.7%まで拡大し、年間の手続件数ベースで見たオンライン利用率は86.0%に達しています。
数の動きも押さえておきたいところです。オンライン化実施済の手続は前年度から2,195種類増えて40,932種類になった一方で、未実施の手続も272種類増の22,943種類(30.1%)となりました。手続の総数そのものが75,071種類から76,275種類へ増えているため、分母と分子が同時に動いている点は読み取りの前提になります。オンライン化が進んだシステムは、電子メールを除くとe-Govが358種類、産業保安システムが54種類、マイナポータルが36種類の増加でした(出典: デジタル庁 行政手続等の調査結果概要)。
この調査の公表は、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成14年法律第151号)の第25条に定めがあり、同条の見出しは「情報通信技術を活用した行政の推進に関する状況の公表」です。第2項では、内閣総理大臣が各機関の公表事項を取りまとめ、その概要を随時公表するものとされています。毎年この時期に更新される定点観測データという位置づけになります。
士業事務所の実務に直結する4つの数字
調査結果のうち、士業事務所の日常業務にそのまま跳ね返ってくる数字は4つあります。
第1に、商業登記事項証明書です。事業者の申請手続で求められる添付書類として最も多く、2,791種類の手続で規定されています。年間手続件数は約8,140万回に上りますが、実際にオンラインで処理された割合を示すオンライン利用率は17.4%にとどまりました。制度としてはオンライン対応が進んでいても、現場の運用が紙のまま残っている構図が読み取れます。司法書士・行政書士の受任案件で紙の証明書取得が減らない実感とも重なる数字です(出典: デジタル庁 調査結果概要)。
第2に、戸籍謄本です。915種類の手続で添付書類として規定され、これを求める手続のオンライン化率は44.4%と、主要な添付書類のなかで最も低い水準でした。相続や氏名変更を扱う実務では、案件の半分強でオンライン申請の選択肢がないことになります(出典: デジタル庁 調査結果概要)。
第3に、税務・会計まわりの書類です。定款は2,535種類、決算書は1,627種類の手続で規定されています。決算書を求める手続のオンライン化率は80.6%と高く、他の添付書類が56.1%から72.8%の範囲であるのと比べても進んでいます。デジタル庁は、法人・不動産の登記事項証明書について行政機関間の情報連携が可能になったことがオンライン化率の向上につながったと分析しており、情報連携の拡充が鍵になるという整理をしています(出典: デジタル庁 調査結果概要)。
第4に、年間手続件数が1,000回以上1万回未満の帯です。この層のオンライン化率は58.5%で全帯域のなかで最も低く、概要資料はその理由について「資格・免許等の業種別の許認可手続が多く、優先順位付けが難しい層である」と説明しています。行政書士が扱う許認可業務が集中する領域が、そのままオンライン化の空白地帯として残っている形です(出典: デジタル庁 調査結果概要)。
もう一点、受け手の違いによる差も見逃せません。国等への申請手続はオンライン化率73.9%・オンライン利用率78.5%である一方、地方自治体等への手続はオンライン化率48.2%に対してオンライン利用率が28.9%にとどまり、整備状況と実際の利用の間に開きが出ています。加えて、オンライン化されている申請手続18,075種類のうち42.9%は電子メールによる受付です。オンライン化という言葉が指す実態が、システム経由なのかメール添付なのかで、事務所側の作業量は大きく変わります(出典: デジタル庁 調査結果概要)。
同じデータをAIから自然言語で扱う動きが始まっている
この調査データについては、デジタル庁自身がAIから扱えるようにする実装を公開しています。2026年8月13日に同庁公式noteで公開された技術記事「行政手続等調査データ(約75,000件)をMCPで自然言語分析可能に」がそれで、プロダクトマネージャーの土岐竜一が執筆したものです。令和6年度調査の結果データ約75,000件を対象に、MCP(Model Context Protocol)を使って対話形式で分析できる実装がGitHubで公開されています。

設計上のポイントは、約75,000件をそのまま大規模言語モデルに読み込ませるのではなく、モデルには検索・集計条件の指定だけを担わせ、実際の計算はMCPサーバー側で実行する点にあります。項目の意味やコード値、欠損の扱い、指標の計算方法をdataset.yamlに定義しておくことで、データの誤読や不適切な集計を抑える狙いです。データ本体はApache Parquet形式で保持され、約75,000行×39列が約3MBに収まります。ライフイベント横断の検索にも対応しており、「結婚・離婚」に関連する手続として328件が抽出される例が紹介されています。相続・法人設立・役員変更・事業承継といった、士業が受任するイベント単位で手続を洗い出せる作りです(出典: デジタル庁Techブログ)。
データの取り扱いについても確認しておきます。この実装はデジタル庁が公開した調査結果データを読ませるもので、事務所の顧客情報を投入することは想定されていません。ブラウザ内蔵AIを使うapcli previewモードではツール実行がlocalhost内で完結すると説明されていますが、Claude DesktopやChatGPTなどのチャットUIから利用する場合に、各サービス側へ何が送信され学習にどう扱われるかは、今回の公表資料からは確認できません。この点は各AIサービスのポリシーを個別に確認する領域になります。なお同庁は末尾で、この実装が技術検証を目的としたサンプルコードであり、動作の安定性や継続的な保守を保証するものではないと明記しています。MCPサーバーを事務所業務に組み込む場合の一般的な考え方は士業事務所のMCPサーバー構築手順、2026年7月28日のMCP仕様改訂についてはMCP最新仕様と士業システム連携で整理しています。
これから何が動くか、事務所は何を見ているか
調査結果のまとめでデジタル庁は、残る未オンライン化手続や添付書類の省略が進んでいない手続は、費用対効果が見込みにくいと各府省庁が判断している領域に集中していると整理しています。実際、オンライン化されていない理由は手続種類数ベースで53.5%が「オンライン化の費用対効果が小さい又は不明」でした。そのうえで、添付書類の電子化と行政機関間のデータ連携を一体的に進める方針が示されています(出典: デジタル庁 調査結果概要)。
事務所側の初動としては、次のような確認が現実的な範囲です。第1に、公開されている棚卸調査のExcelを自所が扱う法令・手続で絞り込み、オンライン対応の可否と実現方法(システム経由か電子メールか)を洗い出す段階です。第2に、手数料の納付方法を確認する動きがあります。手数料納付が必要な申請手続3,305種類のうち63.1%はオフライン納付のみで、オンライン申請ができても納付で窓口に戻る手続が残っています。第3に、電子メール受付の手続について、提出物のファイル形式や命名規則を事務所内で標準化しておく対応を採る事務所があります。第4に、次期オンライン申請サービスの動向と合わせて、来年度以降の申請導線の変化を追う段階に入っています。
まとめ
デジタル庁は2026年8月26日、令和7年度の行政手続等調査結果を公表し、オンライン化率が53.7%、件数ベースのオンライン利用率が86.0%に達したことを示しました。商業登記事項証明書のオンライン利用率17.4%、戸籍謄本を求める手続のオンライン化率44.4%など、士業実務に直結する数字も明らかになっています。同じデータをMCP経由でAIから分析できる実装も同庁自身が公開しており、調査結果の読み方そのものが変わり始めています(出典: デジタル庁 調査結果概要)。
参考文献
- デジタル庁 行政手続等の悉皆調査結果等
- デジタル庁 行政手続等の調査結果概要(2026年8月26日・PDF)
- デジタル庁Techブログ 行政手続等調査データ(約75,000件)をMCPで自然言語分析可能に
- e-Gov法令検索 情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律
- GitHub digital-go-jp/administrative-procedures-mcp
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https://shigyonochikara.jp/contact/
引用元: デジタル庁
本記事の作成体制について
本記事は士業のチカラ編集部が、公表されている一次情報のみを根拠に作成しています。法令の条文はe-Gov法令検索の原文で、行政の見解は各府省庁の公表資料で、それぞれ確認したうえで記載しています。引用元は本文中および参考文献にすべて明示しています。
本記事には特定の資格者による監修は入っていません。個別の事案について法令の当てはめや手続の可否を判断する必要がある場合は、当該分野の有資格者にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別具体的な法律判断・税務判断・労務判断を提供するものではありません。
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